「他にお困りのことは……、肩こり? 分かりました。得意な社員を探しましょう」
前職では運送会社(地球内)の営業を勤めていたが、行き過ぎた効率主義が合わず六十を過ぎて独立。顧客に寄り添ったきめ細やかなサービスを信条として起業する。だが、サービスが行き過ぎて目覚ましい収益は上がらないようだ。最近は社長室に『まごころ第一』というスローガンとともに『倹約は美徳』と墨で書かれた横断幕がかけてある。その社長室も、最近四畳半になった。
「社長がサービス精神の塊なので、私はサービスなしでちょうどよいかと」
社長が相談相手として頼るほどの経営手腕を持った凄腕秘書。趣味は戦略ボードゲームとPCシミュレーションゲームと株式投資。良くも悪くも空気を読まない性格と、歯に衣着せぬ物言いで、同期や同僚とはあまり親しくない。目下の悩みは、ボードゲームの相手をしてくれる友達が少ないこと。ちなみに自社の株は買ってない。
「任せて。ここには有能な者しかいないの。有能な者しか置かないようにしているから」
小さな運送会社だったこの会社を自分で買収し、自分でCEOに就任すると、宇宙事業の開業を発表したワンマン若手経営者。経済学の博士号を持っている。直観による経営判断は極めて素早く、無能と判断した社員の解雇も素早い。結構な歳だという噂もあるが、「社長の博士論文、日付見たか?」と同僚に言いかけた社員がとてつもない速さで解雇されたので、真実は闇の中である。
「荷物を改めるなど、いたしません。安全性? 大丈夫! 心配ない! 心配ない!」
身内に優しく、他人に厳しい経営方針で、新興企業を一気に大きくした社長。丁寧な仕事をするが、金を貰った後はもう客を客とも思わない。アフターサービスは一切ない。その代わり金さえ積めばどんな荷物も嫌がらない。儲かっていそうだが、使途不明金が大量にあるせいでそうとも言えない。そういえばこの地区担当の警察署長さん、最近太りましたね。
「以上から、あなたは我々に荷物を託すべきです。それ以外の選択に合理性が?」
火星に本社のある惑星間企業。社内公用語に太陽系共通語を使い、社員全員に眼鏡型のデータ端末を支給し、腕が4本以上ある社員には入力デバイスを二つ支給するなど徹底的な合理化で経営戦争を乗り切る論理派社長。だが顧客が合理的な説明についてきてくれず、業績はあまりよくない。データ上は何の問題もないのだが、顧客の心情にバグでもあるのだろうか。